ラップトップひとつでどこでも働ける時代、旅と日常の境界は少しずつ溶けはじめている。
そんな今だからこそ、泊まる場所もまた、もっと自由で、もっと肩の力が抜けていていいのではないだろうか。
そんな今だからこそ、泊まる場所もまた、もっと自由で、もっと肩の力が抜けていていいのではないだろうか。
沖縄県名護市に計画されているこの宿泊施設は、「集落のように泊まる」というイメージから構想された。客室にこもることを前提とせず、ふと外に出て、誰かの気配や風の音に触れながら時間を過ごす。ここでは、滞在そのものが一日の風景の一部になる。
共用空間は大きく開かれ、建築と一体化したベンチや、縁側のような小さな居場所が点在している。ひとりで仕事をする場所、本を読む場所、昼寝をする場所。使い方はあらかじめ決められておらず、それぞれが思い思いに居場所を選び取っていく。
こうした風景は、整えられたリゾートホテルというよりも、むしろひとつの集落に近い。プライベートとパブリックのあいだに連なる緩やかな中間領域が、人と人との距離を無理なく調整し、偶然のすれ違いや、時間の共有を生み出していく。
日向と日陰、にぎわいと静けさ、内と外。選択肢が穏やかに並ぶことで、人は無理なく自分に合った場所を見つける。そこでは、私的な行為がそのまま許容され、同時に他者の存在も自然に感じられる。誰かと関わることも、ひとりでいることも、同じ地続きの時間として受け止められる。
それぞれが選んだ居場所が重なり合い、離れ、また入れ替わっていく。ここにあるのは、従来の公共空間のような特定の集団のための大きな広場ではなく、個人の時間を受け止める無数の小さな場所である。それらは必ずしも目的のために合理的に準備されたものではなく、人々がそのときの過ごし方や振る舞いに応じて選び取っていくものだ。この空間は、固定された「公共」ではなく、使われ続けることで更新されていく、集落のような公共空間となっていく。
「Semilla」という名前は、villa(邸宅)と village(集落)のあいだにある場所を意味している。過度に閉じることも、過剰につながることもない。その曖昧さを受け入れることで、軽やかで偶発的な関係が育まれる。ここでは、宿泊施設であると同時に、これからの公共空間のあり方を、集落という原初的な形式になぞらえながら、静かに提案している。
【Data】
種別:設計監理、ブランディング
用途:ホテル
構造:RC 造
所在地:沖縄県名護市
竣工:1期工事/2026 年予定
Category: Design, Branding
Principle use: Hotel
Structure: RC
Location: Nago, Okinawa
Scheduled completion: 2026