Photo:©Koji Fujii / TOREAL
信州・松本、田舎らしい民家が軒を連ねる住宅地にあった祖父母の家を建て替えることになった。敷地北側には古い水路の跡が残り、台形敷地の一辺に沿うように緩やかな曲線を描いていた。明確な歩車分離を意図し、南にアプローチと庭、北に駐車場を置くことを考えると、「くの字」型のボリューム配置にたどり着いた。
庭は古来、祭事の場として成立し、時代とともに死生観や自然観を映す存在へと変化してきた。西側に子どもたちが遊べる石畳の庭を、東側に枯山水のような静謐な砂利の庭を配置し、重層的な意味が宿るよう意図した。
リビングダイニングと主寝室は壁によって仕切られながらも、「白壁」と呼ぶ下がり天井が上部を横断し、二室を緩やかにつないでいる。室内と庭をつなぐ内外の軸の上に、公と私をつなぐ室内の軸、アプローチと庭をつなぐ軸。複数の軸が静かに重なり合い、空間に多層的な奥行きを与えている。
室内には祖父母の代から愛用してきた、松本特有の重厚感ある濃い褐色の家具が並ぶ。これらが空間の中で浮いて見えないよう、むしろ最初からこの空間のために誂えられたかのように感じられるよう、マテリアルやディテールを丁寧に検討した。松本城に代表される漆の褐色と漆喰の白のコントラストは、松本という町を象徴する色彩である。ドアハンドルや手摺など、人が手で触れる建築の部位は正八角形断面に統一し、家の中を巡るたびに身体がさりげなく追体験するささやかな装置とした。
土地のコンテクスト、空間構成、マテリアル、ディテール、そして親族の記憶。複数の意味が静かに折り重なった多義的な建築を目指した。
Photo:©Koji Fujii / TOREAL
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【Data】
松本の家
種別:新築/設計監理
用途:個人住宅
構造:木造
敷地面積:314.03㎡
延床面積:155.88
所在地:長野県松本市
竣工:2026年 4月

担当:宮地国彦, 寺本更(元所員)
施工:滝澤工務店
構造アドバイス:mix studio 宍戸幸二郎
照明計画:AURORA 市川善幾
造園:庭蒼 熊谷崇​​​​​​​
写真:TOREAL 藤井浩司

House in Matsumoto
Type: New Construction / Design & Supervision
Usage: Private Residence
Structure: Wooden
Site Area: 314.03 m²
Total Floor Area: 155.88 m²
Location: Matsumoto, Nagano
Completion: April 2026

Team: Kunihiko Miyachi, Sara Teramoto (Former staff member)
Construction: Takizawa Komuten
Structural Advice: Kojiro Shishido (mix studio)
Lighting Design: Yoshiki Ichikawa (AURORA)
Landscape Design: Takashi Kumagai (NIWASO)
Photography: Koji Fujii (TOREAL)

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